LAN建設・保守用測定器の機能比較
2018年10月 DSX2-8000を追記しました。
2018年5月 CableIQ配線検証テスター、インテリ・トーン・プロ 200、DSX-COAXを追記しました。
2017年10月 DSX-8000、SimpliFiber Proを追記しました。
LANテスタとは?
LAN(Local Area Network:ローカル・エリア・ネットワーク)では有線の伝送媒体として光やメタリックのケーブルが用いられ、各種のネットワーク機器やPC端末等の間でデータ通信を行う方式として、物理的な媒体種別や信号伝送方法、相互間でのデータの転送方法等を規格化したイーサネットが、様々な媒体、通信速度により利用されています。
実際の情報転送においては、イーサネットを構成する各階層(layer:レイヤ)での正常動作が必要となります。
LANの構築時や保守運用において、性能確認・設備診断を行うために多種多様なLAN建設・保守用測定器が用いられていますので、ここでは、代表的な機種の比較紹介を行います。
この記事のトピック目次
1.LANケーブル試験
ネットワークにはサーバ、PC端末、プリンタ、各入出力装置など様々な機器が接続され、それらの装置間で円滑なデータ通信を実現するために、通信機器の持つべきネットワークの機能を階層構造に分割したOSI参照モデルが定義されています。LANケーブル試験とは、7層構造となっているOSI参照モデルで最下層のレイヤ1(物理層)にあたるLANケーブル等の通信媒体の物理的特性を評価する試験です。
測定するケーブルの種類には、メタリックケーブルと光ケーブルがあり、これらのケーブルの種類及びケーブル規格に応じ測定器を選定し試験を行います。(※PoE(メタリックケーブルによる電力供給)に関る試験を行う試験器もあります。)
(1)LANケーブルの種類
メタリックケーブル
メタリックケーブルには、同軸ケーブルと平衡対ケーブル(UTP/STP)とがあります。
同軸ケーブルとは、円形の外部導体の中心に円形の内部導体を配置し、両導体間を絶縁体で埋めた構造のケーブルで、主にTV放送信号など高周波信号の伝送に用いられています。更に高周波特性を改善するために、絶縁体として発泡状態の樹脂等を使用するなど様々な種類のケーブルが使用されています。初期のイーサネットにおいて、10BASE-5、10BASE-2などの伝送媒体として利用されていました。
平衡対ケーブルとは、一定の離隔に保たれた銅などの導線のペア(対)により電気信号の伝送を行うケーブルです。導線を絶縁体で被覆することで一定の離隔を保ち伝送品質を担保し、より合わせることで漏話特性の改善や、多心ケーブル化を可能としています。更に、金属遮へい(フィルム/編素)によるノイズ対策や、発泡絶縁体の使用による高周波特性の改善を施したものもあります。初期の10BASE-T以来、イーサネットにおいてCAT.xケーブルと呼び多用されおり、保証する通信周波数に応じで、ケーブル規格(カテゴリ)が設けられています。
各々の平衡対ケーブル規格毎の代表的な通信速度を下記に示します。
- CAT8(~2000MHz)——-40GBASE-T(25GBASE-T)
- CAT7A(~1000MHz)——10GBASE-T(10Gbps:完全対応)
- CAT7(~600MHz)——–10GBASE-T(10Gbps:完全対応)
- CAT6A(~500MHz)——-10GBASE-T(10Gbps)
- CAT6(~250MHz)——–1000BASE-TX(1Gbps),ATM(1.2Gbps)
- CAT5e(~100MHz)——-1000BASE-T(1Gbps)
- CAT5(~100MHz)——–100BASE-TX(100Mbps),ATM(155Mbps)
- CAT4(~20MHz)———トークンリング(20Mbps)
- CAT3(~16MHz)———10BASE-T(10Mbps)
LANコネクタ
メタリックケーブルと各種装置を接続するLANコネクタにはLANの方式に合わせ種々の物が使用されますが、現在主流となっているxBASE-TにおいてはUTP等のメタリックケーブルの両端に取り付けられるのが8P8Cと呼ばれるモジュラーコネクタです。外観・寸法等が酷似するため一般にRJ-45等と呼ばれています。
●プラグ
撚り対線番号とプラグの端子番号の結線は、米国規格協会(ANSI)で定められており、TIA/EIA-568-B(T568B)やTIA/EIA-568-A(T568A)の規格が用いられています。
ストレートケーブルでは両端に同一の規格が使われ、クロスケーブルにおいては一端がT568B、他端がT568Aの規格が使われています。
●ジャック
ジャックは、各装置の接続インタフェースや、建物内LAN配線において複数並べて設置されるパッチパネルや単独のローゼットとして用いられています。
配線システムにおいて、UTP等のケーブルとジャックとの接続方法については、複数のサプライやにより様々なものが提供されています。
光ファイバケーブル
光ファイバは光を導くための髪の毛ほどの太さの繊維で、石英ガラスを材料としたものが一般的に用いられています。その構造は、光が伝搬するコアと呼ばれる部分と、その周囲を覆う同心円状のクラッドと呼ばれる部分により構成され、コアとクラッドの屈折率を微妙に差をつけることにより界面で光を全反射させ、コアの内部に光を閉じ込める仕組みになっています。コア内部で全反射する光の進み方を伝搬モードと呼び、複数のモードを持つ光ファイバをMM(Multi Mode:マルチモード)ファイバ、一つのモードしか持たないものをSM(Single Mode:シングルモード)ファイバと呼びます。通常、MMファイバとしてはGI(Graded Index)が用いられています。また、各々通信可能な速度と保証される距離が事なります。
光ファイバ自体は外径125μmの石英ガラス製の繊維であり非常に細く折れやすいため、樹脂により被覆を施した外径250μmの光ファイバ心線として取り扱われます。さらに複数の心線を一括し被覆したテープ心線や、厚い被覆を施した0.9mm単心線等に加工した上で、複数の心線を集合したものに外被を施して光ファイバケーブルとなっています。
●GIケーブル
GIケーブルとは石英ガラスを主成分としたマルチモードの光ファイバケーブルで、光が主に伝搬するコア内の屈折率を滑らかに変化させることにより伝搬信号の歪みを抑え、単純な構造のSI(Step Index)よりも伝送特性を改善しています。SMケーブルに比べると伝送損失は大きいですが、コア径が50μmまたは62.5μmと大きく、心線接続が簡単で装置に用いる光電変換部品も安価なため、LANなどの近距離情報通信用途として広く使用されています。
●SMケーブル
SMケーブルとは石英ガラスを主成分としたシングルモードの光ファイバケーブルで、コア径を10μm程度に小さくすることで、コア内を伝搬する光信号のモードを単一にし、モード間の干渉による信号の劣化を抑え、長距離・広帯域な通信を可能としています。通信事業者の中継や加入回線に多様されていますが、近年、イーサネットの高速化やデータセンタ等のビルの大型化に伴いイーサネット等のLANにおいても利用が拡大してきています
GIやSMの光ファイバケーブルを用いた主なイーサネットの規格を下記に示します。
- GI——100BASE-FX:2km、1000BASE-SX:550m、10GBASE-SR:300m
- SM——100BASE-FX:20km、1000BASE-LX:5km、10GBASE-LR:10km、10GBASE-ER:40km
(2)LANケーブルの性能確認試験
代表的な試験項目には、設備品質が規格を満たしているかを確認する認証試験、異なる設備間での信号の干渉状況を確認するエイリアンクロストーク試験などがあります。
●認証試験
認証試験は、配線された通信媒体(メタリックケーブル、光ケーブル)の性能規格へ適合状況を確認するための試験で、伝送損失や帯域特性を測定し評価されます。
●エイリアンクロストーク試験
認証試験として実施される個々の試験は、LANケーブルの規格に応じて定められており、高速な通信に用いるLANケーブルにおいては、エイリアンクロストークの測定を求めています。エイリアンクロストークとは複数のメタリックケーブルを並列して敷設した場合に、隣接するケーブルから受ける (隣接するケーブルへ与える) ノイズのことです。このノイズは、電気信号の伝送に伴い発生する隣接するケーブル間での電磁的な干渉で、通信の高速化により影響範囲の拡大を含め無視できなくなるため、高速のイーサネットの媒体としてメタリックケーブルを使用する際は、測定・評価が必要となります。
(3)LANケーブル保守等で行うパルス試験
パルス試験とは、平衡対や光ファイバなどの伝送路に対し、方端からパルス状の信号(電気・光)を送出し伝送路の長手方向の揺らぎや異常(故障)などにより発生する反射信号を検出することで、伝送路の品質を試験する技術でLANケーブルの保守などに活用される試験です。パルス試験測定器の代表的なものとして、電気パルスを扱うTDRと光パルスを扱うOTDRがあります。
●TDR(Time Domain Reflectometer)
メタリックケーブル(平衡対・同軸)に対して用いられるパルス試験機です。
伝送路に送出した電気パルス信号が、インピーダンス不整合等により反射される状況を計測することにより、断線・ショート(絶縁不良)などの故障位置の推定やケーブル全長の確認等を行うことが可能です。
●OTDR(Optical Time Domain Reflectometer)
光ファイバケーブル(GI・SM)に対して用いられる光パルス試験機です。
光ファイバ固有のレイリー散乱により、光ファイバ内に送出された光パルス信号の後方散乱光は基本的に右肩下がりの直線状の測定波形となります。
光ファイバによる伝送路全体の伝送損失や個々の接続点(コネクタ・融着)の反射・損失等の品質の測定、曲げ・断線などの故障位置の推定などを行うことが可能です。
(4)その他の各種試験
LANケーブルの建設工事や保守の際には、数多く敷設された配線ケーブルの中から対象となるものを迅速に選別し、その性能を確認することが求められます。それらを効率的に行うために様々なツールが用意されています。
●配線検証
配線ケーブルについて、心線がどのように接続され、どの伝送スピード(10/100/100BASE) をサポートしているかを検証し、ネットワークにおけるケーブル問題を素早く特定することが求められます。
●配線探査
LANが大規模化するとケーブルや配線ボックスなどの同一箇所に設置される配線ケーブルの数も増加するため、建設・保守の際に目的の配線ケーブルを容易に選別する方法が求められます。
2.各種LANケーブル試験用測定器の機能比較
代表的なLANケーブルテスタとその機能を表1に示します
表1 LANケーブルテスタの機能比較表
機器名 | DSX2-8000 | DSX-8000 | DSX-5000 | <参考> DTX-1800 | ワイヤーエキスパート(WX-500R) | SimpliFiber Pro | Multifiber Pro | Optifiber Pro OTDR | CableIQ配線検証テスター | インテリ・トーン・プロ 200 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
外観 | ||||||||||
レンタル日額 (税抜)* | ¥8,950 (メタルのみ) | ¥8,850 (メタルのみ) | ¥8,280 (メタルのみ) | - | ¥6,350 (メタルのみ) | ¥9,700 | ¥1,600 | ¥200 |
||
認証試験 (光:オプション) | ○ (2000MHz) | ○ (2000MHz) | ○ (1000MHz) | ○ (900MHz) | ○ (500MHz) | - | - | - | - | - |
ケーブル長 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | - | - | - | ○ | - |
エイリアンクロストーク | ○ | ○ | ○ | △ | △ | - | - | - | - | - |
メタリック 配線検証 | ○ (認証試験に 包む) | ○ (認証試験に 包む) | ○ (認証試験に 包む) | ○ (認証試験に 包む) | ○ (認証試験に 包む) | - | - | - | ○ | □ (ワイヤマップ のみ) |
メタリック 配線探査 | - | - | - | - | - | - | - | - | □ (信号送出のみ) | ○ |
OPM | △ | △ | △ | △ | △ | ○ 単心 | ○ | - | - | - |
OTDR | △ | △ | △ | △ | - | - | - | ○ | - | - |
その他 | 同軸(△)、PoE | 同軸(△)、PoE | 同軸(△)、PoE | 同軸(△)、PoE | 同軸(△) | コネクタ端面検査 | 同軸 | 同軸 | ||
WiFi通信機能 (LinkWare Live用) | ○ | △ | △ | - | - | - | - | - | - | - |
*レンタル価格は、長期割引きあり
(1)メタリックケーブル認証試験
イーサネット規格(伝送規格)による通信性能要件を満たすための、配線部材を含めた配線性能要件等の情報配線システム規格は、ISOやTIA等により規格化され定められています。 情報配線システム規格とは、名前のとおり情報配線システム自体について規定した規格で、一つの敷地内に敷設されたLAN配線のみを対象とし性能について詳細に定義しています。また、布設された配線の性能定義だけでなく、ケーブルやコネクター等の配線構成要素や、ケーブルの両端にプラグを接続したパッチコード単体の性能をも規定しています。
情報配線システム規格は、日本国内においてはISO規格を基に制定されており、これを含めてISO規格/JIS規格/TIA規格3つの規格が主に利用されています。
表2 情報配線システム規格
規格名称 | 特徴 | 利用分野 |
---|---|---|
ISO/ IEC 11801 |
関連する引用規格が多く、ツイスト・ペア・ケーブル配線の測定/光ファイバ配線の測定/配線の管理/配線の設計と施工の規格というように、情報配線の全般にわたり細かく規格が規定されています。 | 国際規格としての位置づけから、公的機関や欧州系企業で多く使われます。 |
JIS X 5150 | 現在、情報配線規格のみがJIS化されており、測定に関しては2つの規格、すなわちツイスト・ペア・ケーブル配線の場合はIEC61935-1、光ファイバ配線の場合はISO/IEC 14763‒3 が引用されており、それらの規格に準じて測定を実施することが規定されています。 | 国内規格ということから官公庁や自治体などで幅広く採用されており、国土交通省による公共建築工事標準仕様書にはJISX5150のパーマネント・リンクに従って情報配線の構築をすることが指定されています。 |
ANSI/ TIA-568-C |
米国で策定された規格ですが、日本で製造・販売されている配線部材のほとんどが、この規格に基づいています。4分冊から成り、ISOと同様に情報配線および配線部材について詳細に規定しています。なお、この規格はオフィス・ビルでの利用を前提としており、別途データ・センター向けの配線規格として、TIA-942が定められています。 | 民間企業の施工案件を中心に採用されており、日本ではLANの構内配線システムが登場した当初から最も広く適用されている規格です。 |
一般的にネットワーク装置やPC等のエンド~エンド間の配線を「チャネル」と呼びます。チャネルは両端がLANコネクタのプラグとなり、その長さは100m以下が一般的です。実際のチャネルは、「パーマネントリンク」と呼ばれる複数のジャックを並べて設置したパッチパネルや個々のモジュラージャック等の間をつなぐ水平ケーブルと、ネットワーク装置や端末機器との接続に用いる「パッチコード」によって構成されることになり、それらの標準的な長さについてはISO等により国際規格が定められています。
認証試験では、ANSI/TIA,JIS等の規格で定められた様々な項目において、配線されたケーブルの特性を測定し評価を行います。更に、規格値はケーブルのグレードと対応し個々に定められており、その一例を表3に示します。
表3 認証試験測定項目(例:ANSI/TIA)
測定項目 | (TIA-568-C.2) | Category 3 | Category 5e | Category 6 | Category 6A | 単位 |
---|---|---|---|---|---|---|
DC loop resistance | 直流ループ抵抗 | 25/21 | 25/21 | 25/21 | 25/21 | (Ω) |
DC resistance unbalance | 直流抵抗平衡度 | 200/ー | 200/ー | 200/ー | 200/ー | (mΩ):(or 3%) |
Return loss | 反射減衰量 | ー/ー | 10.0/12.0 | 8.0/10.0 | 6.0/8.0 | (dB)<最高周波数> |
Insertion loss | 挿入損失 | 14.9/13.0 | 24.0/21.0 | 35.9/31.1 | 49.3/43.8 | (dB)<最高周波数> |
NEXT loss | 近端漏話減衰量 | 19.3/21.0 | 30.1/32.3 | 33.1/35.3 | 26.1/26.7 | (dB)<最高周波数> |
PSNEXT loss | 電力和近端漏話減衰量 | ー/ー | 27.1/29.3 | 30.2/32.7 | 23.2/23.8 | (dB)<最高周波数> |
FEXT loss | 遠端漏話減衰量 | ー/ー | ー/ー | ー/ー | ー/ー | |
ACRF | 減衰対遠端漏話比 | ー/ー | 17.4/18.6 | 15.3/16.2 | 9.3/10.2 | (dB)<最高周波数> |
PSFEXT loss | 電力和遠端漏話減衰量 | ー/ー | ー/ー | ー/ー | ー/ー | |
PSACRF | 電力和減衰対遠端漏話比 | ー/ー | 14.4/15.6 | 12.3/13.2 | 6.3/7.2 | (dB)<最高周波数> |
TCL | 横方向変換損 | ー/ー | ー/ー | 14.0/- | 9.5/- | (dB)<最高周波数> |
TCTL | 横方向伝達変換損 | ー/ー | ー/ー | ー/ー | ー/ー | |
ELTCTL | 等レベル横方向変換損 | ー/ー | ー/ー | 2.0/ー | 2.0/ー | (dB)<25MHz> |
Coupling attenuation | ー/ー | ー/ー | ー/ー | ー/ー | ||
Propagation delay | 伝播遅延 | 553/496 | 548/491 | 546/490 | 543/490 | (ns)<最高周波数> |
Propagation delay skew | 伝播遅延スキュー | 50ns/44ns | 50ns/44ns | 50ns/44ns | 50ns/44ns | (ns)<全周波数> |
ANEXT loss | エイリアン近端漏話減衰量 | ー/ー | ー/ー | ー/ー | ー/ー | |
PSANEXT loss | 電力和エイリアン近端漏話減衰量 | ー/ー | ー/ー | ー/ー | 49.5/49.5 | (ns)<最高周波数> |
Average PSANEXT loss | 平均電力和エイリアン近端漏話減衰量 | ー/ー | ー/ー | ー/ー | 51.8/51.8 | (ns)<最高周波数> |
AFEXT loss | エイリアンエ遠端漏話減衰量 | ー/ー | ー/ー | ー/ー | ー/ー | |
PSAFEXT loss | 電力和エイリアン遠端漏話減衰量 | ー/ー | ー/ー | ー/ー | ー/ー | |
PSAACRF | 電力和エイリアンACRF | ー/ー | ー/ー | ー/ー | 23.0/23.7 | (ns)<最高周波数> |
Average PSAACRF | 平均電力和エイリアンACRF | ー/ー | ー/ー | ー/ー | 27.0/27.7 | (ns)<最高周波数> |
最高周波数 | 16 | 100 | 250 | 500 | (MHz) | |
※Channel/Permanent link(-:未規定) |
以上で説明してきたメタリックLANケーブルの認証試験に用いられる代表的な測定器を表4に示します。
基本的にはメイン(ローカルとも呼ぶ)とリモートの測定ユニットを、対象となるLAN配線の両端に設置し、LANケーブルの性能を測定します。その際にLAN配線の形態に合わせて、パーマネントリンクやチャネルの接続用アダプタを選択することとなります。
メタリックLAN配線の認証試験測定器としては、以前からFluke Networks(フルークネットワークス)社製のDTX-1800が多用されてきましたが、近年のLAN配線の高性能化に対応し同社で製品化されたVersivシリーズのDSX-5000/8000や、リモートユニット側からの操作・確認を可能とし且つ低廉化の図られたSofting(ソフティング)社製のWX-500RがLAN配線施工現場の認証試験用測定器として注目されています。
表4 メタリックLANケーブル認証試験用測定器
モデル | DSX2/DSX-8000 | DSX-5000 | WX-500R | <参考>DTX-1800 | |
---|---|---|---|---|---|
本体 | メインユニット (ローカルユニット) [寸法] <重量> | [279×133×67(mm)] <1.3(kg)> | [279×133×67(mm)] <1.3(kg)> | [232×126×87(mm)] <1.2(kg)> | [216×112×60(mm)] <1.1(kg)> |
リモートユニット | |||||
アダプタ | パーマネントリンクアダプタ | ||||
チャネルアダプタ | |||||
テスト規格 | TIA | カテゴリ3,4,5e,6,6A,8 | カテゴリ3,4,5e,6,6A, | カテゴリ3,5,5e,6,6A | カテゴリ3,5,5e,6,6A |
ISO/IEC | クラスC,D,E,EA,F,FA,Ⅰ,Ⅱ | クラスC,D,E,EA,F,FA | クラスC,D,E,EA | クラスC,D,E,EA,F | |
測定周波数 | ~2000MHz | ~1000MHz | ~500MHz | ~900MHz | |
試験項目 | ワイヤーマップ ケーブル長 伝搬遅延 遅延時間差 直流ループ抵抗 挿入損失 RL(リターンロス) NEXT(近端漏話減衰量) ACR-N(減衰対漏話比) ACR-F(減衰対遠端漏話比) PS(パワーサム) NEXT PS ACR-N PS ACR-F | ワイヤーマップ ケーブル長 伝搬遅延 遅延時間差 直流ループ抵抗 挿入損失 RL(リターンロス) NEXT(近端漏話減衰量) ACR-N(減衰対漏話比) ACR-F(減衰対遠端漏話比) PS(パワーサム) NEXT PS ACR-N PS ACR-F | ワイヤマップ(シールド含む) ケーブル長 伝播遅延 挿入損失 遅延時間差 ループ抵抗 リターンロス NEXT(近端漏話減衰量) ACR-N ACR-F PS NEXT PS ACR-N PS ACR-F | ワイヤーマップ ケーブル長 伝搬遅延 遅延時間差 直流ループ抵抗 挿入損失 RL(リターンロス) NEXT(近端漏話減衰量) ACR-N(減衰対漏話比) ACR-F(減衰対遠端漏話比) PS(パワーサム) NEXT PS ACR-N PS ACR-F |
|
測定時間 | 7秒(カテゴリ5e,6・ISO/IECクラスD,E) 8秒(カテゴリ6A・ISO/IECクラスEA) 15秒(カテゴリ8) | 9秒(カテゴリ5e,6・ISO/IECクラスD,E) 10秒(カテゴリ6A・ISO/IECクラスEA) | 11秒 (カテゴリ5e、6、6A・ISO/IECクラスD、E、EA) | 9秒(カテゴリ6) 22秒(カテゴリ6A・ISO/IECクラスF) |
|
バッテリ動作時間 | 8時間 | 8時間 | 8時間 | 12時間 | |
試験結果レポート (出力例) |
(NEXT<近端漏話減衰量>:ケーブル内の2対間において、信号の送信側<近端>に戻って来る漏話をさす。逆<遠端側>はFEXTと呼ばれる。)
(PS:Power Sum<電力和>の略で、ケーブルを構成する4対間での干渉を、全ての対間で発生する電力を合算して評価する方法をさす。)
(ACR-N:NEXTと挿入損失の比で、受信側(遠端側)におけるデータ信号のSN比に近いものとなる。<同様に遠端側はACR-F>)
(2)エイリアンクロストーク試験
エイリアン・クロストークは、主に隣接する他のケーブルからケーブル外被を越えてランダムに侵入してくるノイズであり、10Gbpsの信号伝送をサポートする10GBASE-Tに対応した情報配線に対しては、ISO、JIS、TIA規格においてエイリアン・クロストークの測定を求めています。
他のケーブルから誘導されるエイリアン・クロストークの中で、近端側(信号源と同じ端)に戻って来るものをANEXT(エイリアン・ネクスト)と呼び、遠端側(信号源と反対側)に向かって行くものをAFEXT(エイリアン・フェクスト)と呼びます。
10GBASE-Tに対応した配線の実際の測定項目としては、PSANEXTとPSAACR-Fが要求されています。
(PSAACR-F:被誘導対に対して、隣接する誘導対からの電力和エイリアンFEXTと、被誘導対の挿入損失の比)
表5 エイリアンクロストーク試験用測定器
対象機器名 | DSX2/DSX-8000 DSX-5000 | WX-500R | <参考> DTX-1800 |
|
---|---|---|---|---|
オプション等 | 不要 | 本体2セット必要 (※ファームウェアのダウングレードが必要) ●接続イメージ | DTX-10GKIT |
|
測定項目 | PS ANEXT (パワーサムエイリアン近端漏話) PS AACR-F(パワーサムエイリアン減衰遠端漏話比) | PS ANEXT (パワーサムエイリアン近端漏話) PS AACR-F(パワーサムエイリアン減衰遠端漏話比) | PS ANEXT (パワーサムエイリアン近端漏話) PS AACR-F(パワーサムエイリアン減衰遠端漏話比) |
(3)メタリックケーブルその他試験(配線検証・配線探査)
LANケーブルの建設・保守において効率良く作業を進めるため、各々の作業目的に特化した様々な測定器が工事現場等で活用されています。
様々なオプションが用意され多機能な認証試験用測定器と異なり、機能を絞った上で小型軽量化を進めることで狭隘な環境や大規模な設備で使用する際の利便性が向上しています。
●配線検証テスター
メタリックLANケーブルで大規模な設備を構築する際には、最終的な認証試験以外に施工過程で配線の正常性を確認していくことが必要となります。
心線接続の状態(ワイヤーマッピング)や伝送帯域の確認等が主な目的であり、その他の必要機能等も装備したCableIQ配線検証テスター等が用意されています。
表6 CableIQ配線検証テスターの仕様
CableIQ配線検証テスター | 項目 | 内容 | |
対応ケーブル | UTP、STP、FTP、SSTP、RG6、RG9、音声、セキュリティー | ||
検証オートテスト | 1000BASE-T、100BASE-TX、10BASE-T、VoIP、1394b S100、TELCO、ワイヤーマップのみ、同軸 | ||
対応可能テスト | ワイヤーマップ、ケーブル長、ケーブル信号性能、デジタル・トーナー、アナログ・トーナー、イーサネット・ポート検出および識別、アナログ電話検出、ポート・ランプ点滅、導通、スピーカー・テスト、ケーブル障害検出、ビデオ信号検出 | ||
ワイヤーマップ | 1本のワイヤーの障害を検出し、最高7個までのリモート・オフィスIDでMuitiMapモードをサポート。破損ワイヤー長を比例表示。対交差(スプリット・ペア)を検出 | ||
試験結果 レポート (出力例) | 障害検出 | 漏話およびインピーダンスを測定し、選択した検証テストに基づく該当制限値と比較。アプリケーションを不適格とするのに十分な場合、配線に大きな問題だけでなく、分散した不具合の位置検出 | |
寸法(重量) | 178×89×45mm(0.55kg) |
●配線探査テスター
メタリックケーブルの探索は、一端から電気信号を送出し、ケーブルに発生する磁界や電界をプローブなどで検出することで探索が行われます。
信号を送出する際には、アクティブなネットワーク装置に対する悪影響や、信号漏れによるケーブル誤認が発生しないように装置を選定し使用することが必要です。
IntelliTone™ Pro 200 LANはデジタル/アナログ信号を活用し効率よくケーブル探索が行えます。
表7 IntelliTone™ Pro 200 LANの仕様
IntelliTone™ Pro 200 LAN | トーナー部 | プローブ部 |
トーナー周波数 | デジタルIntelliTone™信号:コード化デジタル信号 アナログSmartTone™信号:500~1200Hz、4種類 | ― |
出力 | 5V p-p | ― |
トーン検出 | ― | IntelliTone™のデジタル信号と1kHzアナログ・トーン信号の検出 アナログSmartTone™信号 (500~1200Hz)および、その他のアナログ・トーナーを検出 |
トーナー・インターフェース | メインMod8ポート(UTP/STPケーブルの4ペアすべてにトーン生成) 同軸ケーブル用 F コネクター バナナ・ジャック・プラグ×2 | メインMod8ポート(UTP/STPケーブルの全4ペアに対するケーブルマップ用) |
ディスプレイ | LED | LEDインジケーター(8ポイント) 同期LEDインジケーター |
音声 | ― | IntelliTone™(デジタル):マイクロプロセッサ制御によるオーディオ・ファイル アナログ:検出されたトーナー信号 |
制御 | サムホイール・スイッチ | サムホイール・スイッチ、ボリューム制御ホイール |
寸法(重量) | 141x75x32mm(0.3kg) | 222x48x32mm(0.6kg) |
(4)光ケーブル認証試験
光ケーブルの認証試験においても、メタリックケーブルと同様にチャネル、パーマネント・リンクの考え方を適用し、光ケーブルや光コネクタ等の全ての許容損失値を合算した値と、光源と光パワーメータを組み合わせたロス・テスタ等で測定した全損失値を比較し判定が行われます。
測定方法には、測定時の基準値の取り方により1ジャンパ法、2ジャンパ法、3ジャンパ法の3種類があります。
ISO/IEC14763-3では3ジャンパ法が、TIA-568-Cでは1ジャンパ法が推奨されています。
各々の測定方法について概略を下記で説明します。
●1ジャンパ法
光源とパワーメータを1本のジャンパケーブルで接続し、基準値(P1)を測定します。
ジャンパ1と光パワーメータの間に、もう1本のジャンパケーブルを用いて被測定ケーブルとジャンパケーブルを接続し、光パワー(P2)を測定します。
●2ジャンパ法
光源とパワーメータを2本のジャンパケーブルで接続し、基準値(P1)を測定します。
ジャンパ1ジャンパ2の間に被測定ケーブルを接続し、光パワー(P2)を測定します。
●3ジャンパ法
光源とパワーメータを3本のジャンパケーブルで接続し、基準値(P1)を測定します。
ジャンパ3(校正用コード)を外し、被測定ケーブルを接続し、光パワー(P2)を測定します。
〇測定方法
光源と光パワーメータをジャンパケーブルを介して被測定ケーブルへ接続し測定が行われます。
光損失値 = 基準値(P1)- 光パワー(P2) (dB)
と計算されます。
また、各測定方法で光損失値に含まれる内容が異なります。
マルチモードファイバの測定においては、光源から多数の励振モードの光がコア全体に入射された場合に、光コネクタの軸ずれや入射端近傍の光ファイバの曲げ等が損失測定に大きな影響を与えます。
従来はマンドレル等を用いて光ファイバ内の光分布を制御する方法が用いられていましたが、現在は光源からコアに入射される光のパワー分布を定めたエンサークルド・フラックス(Encircled Flux:EF)がIEC61280-4-1で定義されています。
メタリックLAN配線の認証試験測定器は光測定アダプタ用スロットを有しており、前述のマルチモード/シングルモード等の光ファイバの種類やその測定波長に応じて、光源・光パワーメータ等の機能を内蔵する測定アダプタを装着することで、光LAN配線の認証試験測定器として使用できます。各モデルに対応した光測定アダプタを表6に示します。
表8 光測定アダプタ
対象機器名 | DSX2/DSX-8000 DSX-5000 | WX-500R | <参考>DTX-1800 | ||
---|---|---|---|---|---|
マルチモード | オプションアダプタ | CFP-MM-AD | WX_AD_EF_MM2 | DTX-MFM | DTX-GFM2 |
光出力レベル | -24dBm(0.85,1.30μm) | -20~-16dBm (0.85,1.30μm) | -20dBm(0.85,1.30μm) | -7dBm(0.85,1.31μm) | |
光受光レベル | 0.85:-65~0dBm 1.30:-70~0dBm | -40dBm~ | 0.85:-52~0dBm 1.30:-60~0dBm | 0.85:-52~0dBm 1.31:-60~0dBm |
|
距離測定 | 12km | 2km | 5km | 5km | |
シングルモード | オプションアダプタ | CFP-SM-AD | WX_AD_SM2 | DTX-SFM |
|
光出力レベル | -4dBm(1.31,1.55μm) | -9~-5dBm (1.31,1.55μm) | -7dBm(1.31,1.55μm) | ||
光受光レベル | -70~0dBm | -40dBm~ | -60~0dBm | ||
距離測定 | 130km | 20km | 10km | ||
測定時間 | 3秒 (距離測定とバジェット計算を含む) | 6秒 (2波長,双方向試験) | 12秒 |
(5)光ケーブルその他試験(OPM・OTDR)
OPM試験
光ケーブル試験の認証試験は、光源とOPM(Optical Power Meter:光パワーメータ)等による損失測定が基本となります。光ケーブルの損失試験のみをシンプルに行うために、光源とOPMをセットにした測定器セットが用意されています。
表9 Simplifiber Proの仕様
SimpliFiber Pro | MM(FTK-1000) | SM(FTK-2000) | ||
光パワーメータ | 適用コネクタ | LC・SC | ||
適用ファイバ | SMF、MMF(50.0/62.5μm) | |||
測定波長 (測定範囲) | 0.85μm(-52~10dBm) 1.30/1.31/1.49/1.55/1.625μm(-60~10dBm) |
|||
寸法(重量) | 165x80x39mm(325g) | |||
光源 | 適用コネクタ | SC | SC | |
適用ファイバ | MMF | SMF | ||
光源波長 (送出パワー) | 0.85/1.30μm (≧-20dBm) | 1.31/1.55μm (≧-7dBm) |
||
変調モード | CW、変調光(2kHz) | CW、変調光(2kHz) | ||
寸法(重量) | 142x81x41mm (278g) | 142x81x41mm (278g) |
多心OPM試験
光ファイバケーブルを伝送媒体としたイーサネット規格の拡大や、データセンタ等での光ファイバケーブル配線の普及に伴い、多心のテープ心線を用いた光ケーブルを敷設し、MPO等の多心光コネクタで接続・成端される機会が増えています。
一般的な単心光コネクタで接続する光損失測定器等で、多心光コネクタの測定を行うにはFO(Fun Out)コード等を用いて、1心毎に挿抜しながら行う必要がありました。
多心OPMを用いると、多心の光コネクタ単位で一括して連続測定が行えるため、挿抜切替や測定操作等に要する時間を削減し短時間で試験することが可能となります。
表10 Multifiber Proの仕様
Multifiber Pro | 光パワーメータ | 光源(MM/SM1.31/SM1.55) | |
適用コネクタ | MPO/MTPコネクタ(ピン無し)・2~12心 | ||
適用ファイバ | MMF(50.0/62.5μm)、SMF | MMF(50.0/62.5μm)/SMF/SMF | |
測定波長 (測定範囲) | 0.85/1.30/1.31/1.55μm (-50~0dBm) | ー |
|
光源波長 (送出パワー) | ー | 0.85±0.03μm(-24dBm以上) | |
1.31±0.02μm(-1dBm以上) | |||
1.55±0.02μm(-1dBm以上) | |||
変調モード | CW、変調光(2kHz) | ||
寸法(重量) | 80×145×39mm(325g) | 81×142×41mm(278g) |
MTPコネクタとは?
4心・8心等多心テープ心線相互の一括接続にはMT(Mechanically Transferable)コネクタが用いられています。これはテープ心線を挿入し固定したMTフェルール同士を、MTコネクタかん合ピンを使用し軸合わせし、MTコネクタクリップでMTフェルール同士を固定し接続を保持するものです。
配線パネルでの光ファイバケーブル間や、ネットワーク装置と光ファイバケーブルとのコネクタ接続等では着脱の容易性が求められるため、MTフェルールにコネクタハウジングを装着しプッシュオン-プルオフ機能を持たせたMPOコネクタがIEC61754-7にて国際規格として標準化されています。
MTP®コネクタはMPOコネクタに完全準拠したUS Conec社製のコネクタで、MM/SM用で様々な心数の製品が供給されています。
OTDR試験
OTDRは光パルス試験機とも呼ばれ、光コネクタ等での反射や光ケーブル・光コネクタの各種損失の発生状況を測定点からの距離と対応し特定することが可能なため、配線の不具合箇所の発見のために広く利用されています。
従来、比較的距離が短いLAN 配線においてOTDRが用いられることはあまりありませんでしたが、障害箇所の特定を迅速に行いたい場合や、光ファイバ配線の品質をしっかりと管理したい場合には有用な測定器であり、ISO/IEC14763-3、TIA-568.3-DやJIS X5150 2016いおいて測定、活用方法が規定されています。
表11 OTDR試験用測定器
機器名 | Optifiber Pro OTDR | <参考>DTX-1800+DTX-OTDR-QMOD |
|
---|---|---|---|
外観 | |||
適用ファイバ | SM/GIファイバ | SM/GIファイバ | |
測定波長 /パルス幅 | GI | 0.85μm/3ns~200ns 1.30μm/3ns~1μs | 0.85μm/20ns~300ns 1.30μm/20ns~1μs |
SM | 1.31μm/3ns~20μs 1.55μm/3ns~20μs | 40ns~10μs |
|
ダイナミックレンジ | GI(0.85/1.30) | 28dB/30dB | 24dB/26dB |
SM(1.31/1.55) | 32dB/30dB | 26dB/24dB | |
距離測定範囲 | GI(0.85/1.30) | 9km/35km | 6km/20km |
SM(1.31/1.55) | 80km/130km | 20km/20km |
※NTTRECでは上表以外のOTDRを多数ご用意しています。 ⇒ 詳しくはこちらへ。
(6)同軸ケーブル各種試験(TDR/挿入損失)
同軸ケーブルは優れた高周波特性を持つため、無線通信やTVの接続用ケーブルとして現在も多用されています。また、ビルやマンションにおいては構内ビデオ用配線に加え、CATVインターネット等の各室への分配用LAN配線として利用されています。
LAN工事においても同軸ケーブルの正常性や帯域特性等の測定が必要であり、メタリックLANケーブル認証試験用測定器等に専用アダプタを装着することで測定が行えます。
表12 同軸ケーブルアダプタの仕様
同軸ケーブルアダプタ(DSX-COAX) | 項目 | 諸元 |
入力コネクタ | F型コネクター(オス) BNC型コネクタ(オス) |
|
テスト可能なケーブルタイプ | 同軸ビデオ・ケーブル 同軸ネットワーク・ケーブル |
|
長さ | レンジ:150m<確度:±(2%+0.3m)> 分解能:0.1m |
|
伝搬遅延 | レンジ:750ns<確度:±(2%+2ns)> 分解能:1ns |
|
〔DSX2/DSX-8000、 DSX-5000専用アダプタ〕 | ループ抵抗 | レンジ:0Ω~530Ω<確度:±(1%+1Ω)> 分解能:0.1Ω |
挿入損失測定 | 1MHz~300MHz:20 - 12.5log(f/100), 最大20dB 300MHz~1200MHz:14dB |
|
特性インピーダンス | レンジ:45Ω~110Ω<確度:±([75Ω-測定値]の5%+5Ω)> 分解能:1Ω |
|
HDTDR | レンジ:150m<確度±(2%+0.3m)> 分解能:0.1m |
3.リンク試験
OSI参照モデル7階層のうち、レイヤ2(データリンク層)、レイヤ3(ネットワーク層)等の論理的な通信機能等を評価する試験です。
LAN通信では主にイーサネット規格が用いられており、この規格に応じたインターフェースを有した試験器を選択し試験を行います。
(1)規格と速度
イーサネット規格は、通信速度とケーブルの種類等で分けられます。通信速度毎に対応した規格を下記に示します。
- 10Gbps—–10GBASE-T,10GBASE-SR/LR/ER
- 1Gbps——1000BASE-Tx,1000BASE-T,1000BASE-SX/LX
- 100Mbps—-100BASE-TX,100BASE-FX
- 10Mbps—–10BASE-T
(2)レイヤ2(L2)試験
レイヤ2(データリンク層)では、伝送媒体である各種ケーブルにより物理的に接続された通信機器間で1対1の通信を行います。その際に、個々の通信機器に割振られたMACアドレスを用いて通信相手を識別しています。L2SWを用いてをルーティングすることで大規模ネットワークが構築可能です。また、レイヤ2で取り扱われるVLAN IDを用いることで、物理的に同一なネットワーク上で複数の仮想的なLANを運用することが可能となります。
L2試験とは、レイヤ2に基く各種機能の試験の事を指し、伝送媒体と両端の通信機器で構成された伝送路のパケットロス、遅延、ゆらぎ、帯域などのベアラ品質の測定や、MACアドレスやVLAN IDによるデータ転送の正常性の確認などの試験が代表的なものとなります。品質の測定においては、送信したテスト用信号を対向する端末や測定機などで自分宛てに折り返し、その受信状況を確認するループバック試験などが用いられます。
(3)レイヤ3(L3)試験
レイヤ3(ネットワーク層)では、ルータ等で複数のネットワークが接続された大規模なネットワーク上で、データパケットに付与されたアドレスによりネットワーク間でデータを転送し通信が行われます。インターネットにおいては、IPアドレスに基き、TCPやUDP等のプロトコルと組合せデーター通信が行われています。
L3試験とは、レイヤ3に基く各種機能の試験の事を指し、相手までデータを届けるための通信経路の選択(ルーティング)時の品質・正常性の確認等など、通信プロトコルに関する試験が代表的なものとなります。
Ping試験では、指定した相手先(IPアドレスまたはホスト名)に文字列(パケット)を送り、その戻りの有無でネットワークの接続状態を確認することができます。
QoS(Quality of Service)試験では、トラフィックの属性(音声/データ等)に応じて転送処理に差異を付けたり、帯域保証する技術であるQoSの処理状況の確認などを行います。
4.各種L2/L3テスタの機能比較
代表的なL2/L3テスタとその機能を表10に示します
表13 L2/L3テスタの機能比較表
機器名 | AQ1300-10G | AQ1301 | 帯域試験測定器(XEST-1) | 帯域試験測定器(GEST-01T) | 帯域試験測定器(EST-01) | AccessOneL2テスタ(1070A) | AccessOneL3テスタ(1071A) | OneTouchAT2000 | <参考> DTX-1800+NSM |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
外観 | |||||||||
レンタル 日額(税抜) | ¥10,300 | ¥2,080 | ¥8,520 | ¥2,600 | ¥1,260 | ¥1,640 | ¥1,640 | ¥6,600 | - |
10G | 〇 | - | 〇 | - | - | - | - | - | - |
1G | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | - | ○L2のみ | ○L3のみ | 〇 | 〇 |
100M | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ○L2のみ | ○L3のみ | 〇 | 〇 |
10M | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ○L2のみ | ○L3のみ | 〇 | 〇 |
その他 | 光パワーメータ | ケーブル試験 |
*レンタル価格は、長期割引きあり
(1)リンク試験用汎用測定器
イーサネットでは複数の方式規格化されており、レイヤ2、レイヤ3については共通のプロトコルが用いられていますが、レイヤ1となる通信媒体・通信速度は各々異なるため、汎用のリンク試験用測定器はそれらのインフェースに対応する必要があります。
CATx等の平衡対ケーブルを用いる規格では、RJ-45等のモジュラーがインタフェースとなり、多くの機器が1Gbps/100Mbps/10Mbpsに対応しています。
光ファイバケーブルを用いる規格では、その方式に応じて光波長、送出パワー、符号化方式等が異なるため各々に対応した電気-光変換機能が必要となります。そのために電気-光変換機能をSFPやXFPと呼ばれるモジュール化(光トランシーバ化)し、それを挿抜し交換可能とするこで多数の通信方式に対応しています。
表14 各LAN方式への対応表
機器名 | AQ1300-10G | AQ1301 | AccessOneL2テスタ(1070A) | AccessOneL3テスタ(1071A) | OneTouchAT2000 | <参考>DTX-1800+NSM |
---|---|---|---|---|---|---|
外観 | ||||||
10GBASE-SR | 〇(XFP) | - | - | - | - | - |
10GBASE-LR | 〇(XFP) | - | - | - | - | - |
10GBASE-ER | 〇(XFP) | - | - | - | - | - |
1000BASE-SX | 〇(SFP) | 〇(SFP) | 〇(SFP) | 〇(SFP) | ※(SFP) | ※(SFP) |
1000BASE-LX | 〇(SFP) | 〇(SFP) | 〇(SFP) | 〇(SFP) | ※(SFP) | ※(SFP) |
1000BASE-T | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
100BASE-FX | ※(SFP) | ※(SFP) | - | - | ※(SFP) | ※(SFP) |
100BASE-TX | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
10BASE-T | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
表15 L2/L3試験機能の比較表
機器名 | AQ1300-10G | AQ1301 | AccessOneL2テスタ(1070A) | AccessOneL3テスタ(1071A) | OneTouchAT2000 | <参考>DTX-1800+NSM | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
外観 | |||||||
試験レイヤ | L2 | MAC,VLAN | MAC,VLAN | MAC,VLAN | VLAN | MAC,VLAN | MAC,VLAN |
L3 | IPv4/IPv6 | IPv4/IPv6 | IPv4(Pingのみ) | IPv4/IPv6 | IPv4/IPv6 | IPv4/IPv6 | |
試験内容 | 試験メニュー | オート/マニュアル試験 RFC2544 ITU-T Y.1564 VLAN試験 E-OAM試験 | オート/マニュアル試験 RFC2544 ITU-T Y.1564 VLAN試験 E-OAM試験 | ベアラ品質測定 E-OAM試験 | ベアラ品質測定 | リンク試験 SWテスト/GWテスト DHCPサーバ/DNSサーバ | ネットワーク接続性テスト トラフィック・モニター・テスト |
試験モード | QoS、Ping、ループバック | QoS、Ping、ループバック | Ping、ループバック | Ping、ループバック | Ping、TCP、HTTP、FTP、IGMP、RTSP、SMTP | Ping | |
その他試験 | OPM | 〇 | |||||
PoE試験 | 〇 | 〇 | 〇 |
||||
WiFi | ○ 802.11a/b/g/n |
(2)広域イーサネット試験用測定器
ESTシリーズは10Mbpsから10Gbpsに対応した広域イーサネットの帯域試験用サービステスタです。フィールドエンジニアが加入者宅で開通試験に使用することを想定し、軽量コンパクトなボディで、開通試験は全てNOC(ネットワークオペレーションセンター)からのリモート制御で実施可能です。
表16 帯域試験機能の比較表
機器名 | 帯域試験測定器(XEST-1) | 帯域試験測定器(GEST-01T) | 帯域試験測定器(EST-01) | |
---|---|---|---|---|
外観 | ||||
対応LAN方式 | 10GBASE-SR | 〇(SFP) | ー | ー |
10GBASE-SR | 〇(SFP) | ー | ー |
|
1000BASE-SX | ※(SFP) | 〇(SFP) | ー |
|
1000BASE-LX | ※(SFP) | 〇(SFP) | ー |
|
1000BASE-T | ※(SFP) | 〇(SFP) | ー |
|
100BASE-TX | 〇 | 〇 | 〇 |
|
10BASE-T | 〇 | 〇 | 〇 |
|
試験機能 | L2試験 | Loopback/ VLANタグ挿入/ 送受信 | Loopback/ VLANタグ挿入/ 送受信 | Loopback/ VLANタグ挿入/ 送受信 |
L3試験 | PING/ 送受信 | PING/ 送受信 | PING/ 送受信 |
SFP/XFPモジュールとは?
ギガビットイーサネットやより高速なネットワークでは、通信媒体として光ファイバケーブルが用いられ、光ファイバケーブル種別や伝送距離等に応じて多数の通信方式が規格化されています。しかしながら、ネットワーク機器や測定器等においてレイヤ2以上は通信媒体に関わらず共通なため、レイヤ1機能のみをモジュール化して交換可能として各方式に対応する方法が採られており、SFP/XFPモジュール等は、現在、各種のLANスイッチ、ルータ、測定器等々で用いられているモジュールです。
付表1 モジュール概要
SFP モジュール | SFPとは、Small Form-factor Pluggableの略で、光トランシーバなどとも呼ばれる電子信号を光信号へ変換するための拡張モジュールで、ネットワーク機器に装着して使用します。 1000BASE-T等のメタルケーブル用の通信方式に対応した物もあります。 (寸法:8.5x13.4x56.5[mm]・写真右) 同様の形状で高速化されたSFP+モジュールでは10GbEにも対応しています。 |
|
XFP モジュール | XFPとは、10(X) Gigabit Small Form-factor Pluggableの略でSFPと同様にネットワーク機器に装着し、電子信号を光信号へ変換するための拡張モジュールとして使用します。 (寸法:8.5x18.35x78.0[mm]・写真左) |
高見沢 和俊 NTTレンタル・エンジニアリング株式会社 エンジニアリング部長
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